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 日本の現代演劇がヨーロッパの影響をうけて発展してきたことは言うまでもありません。たとえばシェイクスピア、イプセン、チェーホフ、ベケット、ブレヒトなどが、その代表と呼べるでしょう。なかでも20世紀に活躍したベルトルト・ブレヒト(1898-1956)や、ハイナー・ミュラー (1929-1995)という巨星を輩出した「ドイツ演劇」は、日本の「新劇」から「現代劇」にいたるまで、強い影響を与えてきました。そして現在も多くの演劇人によって実験的な試みがなされているドイツの首都ベルリンは世界の演劇の中心にあると言っても過言ではありません。
  しかし、私たちは日本から遠いドイツの演劇を観る機会があまりにも少なく、戯曲など、翻訳された出版物から「ドイツ演劇」を知ることの方がずっと多いように思います。「ナマの舞台」を観ることが演劇の本質だとすれば、私たちは日本の現代演劇に大きく係わった「ドイツ演劇」を知らないままということになります。
  そこで、大阪大学の市川明教授の協力を得て、〈ケバブ実行委員会〉を創設し、ドイツで活躍する若き演出家を大阪に呼び、日本人俳優と共に「ベルリンの演劇」を精華小劇場で創ることになりました。舞台製作の中心としてドイツ人演出家を置き、観客が「言葉の壁」につまずかないように日本人俳優をキャスティングしました。そして上演作品は『Kebab』。ドイツ人演出家 Enrico Stolzenburg(エンリコ・シュトルツェンブルク) がベルリンのシャウビューネ劇場で上演した作品です。
  皆様には、公演はもちろん、同時に開催される演出家による講演会にもお時間の許す限りご参加頂き、この機会にドイツ人演出家の演出法や演劇理論、ドイツの劇場制度などに触れて頂ければ幸いです。

ケバブ実行委員会事務局長 笠井友仁